GrayNightlyの雑記

GrayNightlyの日々の事

2017年11月17日 ”カフェオ猫と15の椅子”にて ChelseaTerrace❄GrayNightly(mayumi)のライブでした

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ChelseaTerrace❄GrayNightly(mayumi)のライブレポート 西崎憲作成

2017年11月25日 ”カフェオ猫と15の椅子”にて(東京 綾瀬)

撮影 小林しの

 

❄サポートメンバー

★Vn    梶山織江(スイスカメラの作詞作曲、Vo、Vn、Syn)

★Bass アオイユミ(michiganizedの作詞作曲Vo、Bass、P、Syn、Programming/ 弱虫倶楽部の  Bass)

★Sax      RyoheiKoyanagi(作曲の他、Boyish、For Tracy Hyde、FragileFlowers、よしだそういちろうぐるーぷ他多数サポート参加)

 ❄SE the radio dept.  lesser matters

ツイッターに掲載頂いたレポートを私がこちらにまとめた。自分のライブレポートなんて一生ないと思っていたから、しかも敬愛するスイスカメラの西崎憲さんが・・・。人生何がおこるかわからないというのが本当にあるのだな・・・・。ありがとうございます)

西崎憲さんの簡単なプロフとツイッターアドレス

https://twitter.com/ken_nishizaki

『全ロック史』(人文書院)著者、スイスカメラリーダー、日本翻訳大賞創設、文学ムック『たべるのがおそい』主宰、フラワーしげるペンネーム)、dog and me records( )惑星と口笛ブックス(

 

以下、西崎憲さんによる文

 

Twitter には向かないとも思うのですが、文責のある文を長めに書きます。本体は2017年11月25日に行われたチェルシーテラス(mayumi)のライヴレポートです。批評という形でかつ視点が歴史的視点ですので敬称略です。タイトルは

 

「綾瀬で歴史を感じた夜 西崎憲


最初に Chelsea Terrace のプロフィールはこちらです。https://www.facebook.com/chelseaterrace/  http://graynightly.mystrikingly.com/ 洋楽マニアだったらこのプロフィールを見て大体出音が分かるかと思います。UKへの偏りがあり、ヴォーカルや空間をいかし、メロディーもかなり重視か、という感じの音が浮かぶかと思います。


ライヴが行われたのは足立区綾瀬の特異なライヴハウス/ホール「カフェオ猫と15の椅子」。家から近いが綾瀬に降りたことはほとんどなくちょっと不思議な空気感の町だなと思う。11月の陽は落ちるのが早くかなり暗い。少々迷って開始時刻を5分過ぎて到着したがまだ開演前。


「カフェオ猫と15の椅子」はマンションの一室を改造した場所、最大15人収容。本日は機材が多いせいか11席設営。入った瞬間、冷蔵庫の中のようだと思う。防音材なのか銀色のようなものが壁に貼ってる。そのせいか。しかしこの冷蔵の中は宇宙のように広かったと後で思う。


とにかく狭い。12畳くらいの縦長のマンションの部屋である。しかし閉塞感はあまりない。客同士の微妙な連帯感が生じるようでもある。


Chelsea Terrace は姉と弟の二人のユニットで、今回は本当に久しぶりのライヴで、姉の mayumi のソロということになるのだろうか。3人のゲストを呼んでの綿密なリハーサルを重ねたライヴだった。時間は2時間弱くらいか、曲数のメモは取らなかったが、10数曲か。


カテゴリーで語るのは失礼だが、シューゲイジングあるいはドリームポップに接するニュアンスがあった。それらのジャンルは基本的にネオサイケデリック的な印象があるが、エレクトリックな音が随所に入っている音作りは空間とあいまって素晴らしくサイケデリックだった。


基本的な歌唱はウィスパーに近く、しかしその声でポップなものを歌うとき、ひじょうに魅力的に感じた。海外のアーティストからコラボのオファーが多くあるのもうなづける歌唱だった。ウィスパーにも軽いウィスパーと重いウィスパーがあって後者の印象。


なかでも「青いスカート」は印象に残った。ワンコード、モータウン風のリズム、歌はウィスパーなのに、ひじょうに自由な印象があり、何度でも聴きたいと思った。


特筆すべきはドラムレスだったことだろう。ドラムあるいはパーカッションがないことで、さらに音は自由になって、歌の良さが生きたようでもあった。ドラムレスの音楽の可能性を広げたように思った。 ポップやロックはドラムの呪縛から逃れるのは大変なのだ。

 
サポートの3人もそれぞれに興味深かった。 ベースのアオイユミは「弱虫倶楽部」のベーシストで、「MIchiganized(ミシガナイズド)」という名でソロ活動をしている。

 
今回のライヴには15分ほど、彼女のソロパートがあり、それはアップルのノートパソコン音源+エレギ+Voの組合せで演奏された。冷たい手触りのダンスミュージック、冷静なヴォーカルスタイル、テレキャスターのジャングリングという、独創を感じさせるスタイルだった。


アオイユミのベースは正確なリズム、丁寧さ、重音等が心地よく、フレージングやタイミングなどモータウンのベースを連想させた。演奏後に話を聞く機会があって、ジェームズ・ジェマーソンの名前が出てきて、それが錯覚でないことが分かった。ジャズベースの音は秀逸だった。

 

アルトサックスの Koyanagi Ryohei にも似たようなことを考えていた。日本のジャズのサックスプレイヤーは一時それなりにたくさん聞いてきたが、ここまでロックやリズム&ブルースのニュアンスを感じたプレイヤーはいなかった。


どうしてもジャズが第一教養というニュアンスがあり、それはどうしようもないのか、サックスはしょうがないかとこれまでは諦めていた。しかし Koyanagi Ryohei には驚いた。まったく新しい世代ではないか。ジャズ_も_いいよね、と言うプレイヤーではないのか。



ヴァイオリンの梶山織江の役割も興味深かった。梶山織江はスイスカメラのVo&Vln&synhである(筆者の同僚ということになる)。堀江由衣等に曲を提供しているソングライターでもある。今回の4人の組合せが興味深かったのは4人の音楽的背景の違いもその一因だろう。

 
梶山織江が全体に足したのはメロディーと美しい抒情的ニュアンスだった。Eヴァイオリンなのに、繊細で種類の多いヴィブラート、ライン作りは驚異でもあった。アルトサックスとエレヴァイオリンのユニゾンというこれまでの生涯で聞くことのなかった音も耳にすることができた。


サポートの3人に言えることは全員、楽器で歌えるプレイヤーであるということで、そのため特異なサウンドスケープが生まれたのではないだろうか。


そして付言したいのは、この「カフェオ猫と15の椅子」という場である。キャパ15人である。どう考えてもこれは経済を考えていない。インディーそのものみたいな場である。 この場所のオーナーは実は日本の音楽、インディーの世界で最も重要な人物のひとり原朋信である。


原朋信のウィキはこちら。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ 原朋信 シュガーフィールズのメンバーであり、カフェオレーベルの主宰である。同レーベルからインディーズデビューアルバムを出した方々を見てほしい。スネオヘアーくるりマーガレットズロース、the sworn group……。


そして「カフェオ猫と15の椅子」の入っているビルはまさに日本の現代のインディーのティンパンアレーなのである。1階はレコーディングスタジオになっていて、原朋信自身のエンジニアリングで1時間4000円ほどで使用できるのだ。夢のようではないか。

 
結論めいたことを記すと11月25日のライヴは複数の意味で歴史的なライヴだった。それは70年代のアメリカのR&Bと繋がっていて、90年代のシューゲイジングに繋がっていて、またいまの日本でインディーでやっていくことに密接に関係があった。そして音楽そのものに。

 
この夜はポップでありサイケデリックであり、理想的な世界、夢のような世界を垣間見せてくれた唯一無二の夜だった。観客11人。それもまた美しい事実のように思われる。サンキュー、ポップ&ロック!


参考資料1 チェルシーテラス ディスコグラフィー bandcamp …https://graynightlyakachelseaterrace.bandcamp.com/ チェルシーテラスmayumi @chelseat4529 アオイ ユミ @hosak1ktm_yumi MIchiganized 弱虫倶楽部


参考資料2 Koyanagi Ryohei @RyoheiKoyanagi Boyish セカンドサマーオブラブ よしだそういちぐるーぷ など 梶山織江 swisscameraKajiyama @swisscamera スイスカメ


参考資料3 世界最小ホール「カフェオ猫と15の椅子」 @cafeoneko Cafe au Label/カフェ・オ・レーベル http://www.cafeo.tv/ 原朋信 ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/ 原朋信